体育祭

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「仲良しの2人のツーショット、撮っちゃった。」 見ると、実行委員のカメラ班の男子生徒が、俺と佐伯にカメラを向けている。 「あ、あの…」 どうしよう、と言わんばかりの顔で、佐伯が俺の顔を見上げてきた。 たぶん佐伯は、俺達の関係を疑われることを心配してるのだろう。 確かに、普段あんなところを見られて写真まで撮られたら、さすがに俺も、ちょっと焦ってたかもしれない。 けど、今の場合は違う。 俺と佐伯は、二人三脚のペアだという、公的な理由がある。 端から見ても、お互いの足首を縛ってるんだから、多少距離が近くても不自然ではないだろうし、 競技中は肩を組むんだから、頭を撫でてやるくらいのスキンシップ……。 いや……もっと密着したって……。 そこまで考えてから、俺の中に、ちょっとしたイタズラ心が芽生えてきた。 「…なあ、もう1枚撮ってくれよ。」 「え…」 「…せんせ?」 きょとんとした顔で見上げてくる佐伯に向かって、俺はニヤリと笑うと、 素早く佐伯の頭を抱え込むようにして、グイッと引き寄せた。 「!…せんっ…」 急に引き寄せられた勢いで、佐伯は俺にしなだれるような格好になる。 構わず俺は佐伯の肩に腕を乗せると、カメラに向かってピースサインをした。 「勝利宣言。ほら、佐伯もピースして。」 「……」 「佐伯、照れるなって。じゃ、撮りますよ。」 実行委員の男子生徒が、もう一度カメラを向ける。 カメラには、さっきよりも密着した姿勢で、澄ました顔でピースサインをする俺と、 真っ赤になりながら控え目にピースサインをする佐伯の姿が、収められた。
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