体育祭

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入場門から軽く小走りで入場して、整列する。 ピーッという笛の音を合図に、二人三脚の競技が始まった。 予行練習の時と違うレースの行方に、俺は眉をひそめる。 予行練習では俺のいるAチームが、最初からBチームとの差をかなり広げていたのに、 本番当日の今日は、わずかにリードしてるだけだ。 ……まずいな。 中盤でもう少し、差を広げておかないと……。 そう思った俺は、佐伯に小さな作戦変更を伝えた。 「佐伯、練習の時より速く歩くからな。」 「え」 「予行練習の時より、Bチームのペースが速いから、ほとんど差がついてないだろ? 俺と佐伯で、一気に引き離すから。 1、2、1、2…これくらいの速さで。どう?歩けそう?」 「はい。先生…頑張りましょうね。」 「おう。」 俺と佐伯は微笑みあいながら、手をグーにしてコツンとぶつけ合った。 いよいよ俺と佐伯の順番になり、白線の前に並んで立つ。 予行練習よりも、もっと密着して抱き寄せるように肩を組む俺に、佐伯が小声で耳打ちしてくる。 「…先生…いくら何でも、くっつきすぎなんじゃ…」 「いいだろ、今日くらい。みんなの前で、お前とこんなに堂々とくっつけるチャンスなんて、なかなかないんだから。」
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