体育祭

48/63
前へ
/388ページ
次へ
帰ってきた前の走者と入れ替わるようにして、両チームともほとんど同じくらいのタイミングでスタートする。 俺のかけ声に声を重ねながら、佐伯は俺のTシャツの背中をぎゅっと掴んで、必死で俺の動きに合わせてくれた。 そのおかげで、急な作戦変更にもかかわらず、俺と佐伯は転びそうになることもなく、驚異的な速さでBチームとの差を広げることができた。 戻ってきた俺と佐伯を、Aチームのみんながハイタッチをして出迎えてくれる。 「滝沢先生達、メチャメチャ速いじゃないですか。」 「競歩のレベルですよ、あれは。」 「まあな。俺の作戦勝ち、てやつだよ。な?」 俺はそう言って、佐伯の顔を覗き込んだ。 「やったな、佐伯。お疲れ様。」 「先生が…リードしてくれたから…」 二人三脚はそのまま、Aチームの勝利となる。 Aチームのみんなは、大喜びしながら、手を取り合って勝利を分かち合っている。 その輪の中に混ざりながら俺は、少し興奮している自分に気づいた。 ……こういうのも、たまには悪くないな。 生徒と一緒に熱くなって盛り上がるのも、さ……。 嬉しそうな生徒の顔を眺めていると、ふ、と佐伯と視線がぶつかった。 俺と佐伯は、レース前と同じ様にもう一度微笑みあうと、今度はハイタッチを交わした。
/388ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5283人が本棚に入れています
本棚に追加