体育祭

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「どうした、それ。足首にそんなの、はめてたっけ?」 「え、あ、えっと…」 途端に青山の顔が、焦ったような表情に変わる。 「な、何でもないです。本当に。」 「……」 「足を痛めたとかそんなんじゃなくて、これは、その…ただの飾りです。」 サッと目を逸らした青山を見て、俺は確信した。 ……こいつ、足、痛めてるな……。 俺は、ポンと青山の肩に手を置くと、諭すように話しかける。 「無理するなよ。今からでも他の実行委員の奴に、代走頼めば…」 「大丈夫です、これくらい。俺、走れます。」 青山は、ガシッと俺の腕を掴んで、真っ直ぐに俺を見つめて言った。 「ちょっと捻っただけです。これくらい、部活の練習中になった事ありますから分かります。 そんなに長距離を走るわけじゃないし、大丈夫です。」 「けど…」 「お願いです。みんなには黙ってて下さい。 せっかく盛り上がってるのに、雰囲気壊すような事したくないんです。」 「……」 必死で訴えかけてくる青山に負けて、俺は頷いた。 「…ちゃんと最後までゴールできること。これが出場できる条件。 走るからには、途中で棄権なんて許されないからな。」 「はい。絶対に最後までゴールします。」 「…分かったよ。その代わり、リレーが終わったらすぐ、保健室に行けよ。」 「はいっ。」 そんな会話を交わしているうちに、リレーはあと2人走ればアンカーというところまで進んでいた。
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