体育祭

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アンカーのたすきをかけて、青山と白線の前に並んで立つ。 先にバトンを持って走ってきたのは、Bチームだった。 「青山、頼んだぞ。」 バトンを受け取った青山が走り出してすぐ、Aチームの走者が俺にバトンを渡した。 まだそんなに遠くない青山の背中を、懸命に追いかける。 「滝沢せんせー、頑張ってー。」 『ファイト一発!滝沢先生!!』と書かれた横断幕を掲げて声を張り上げる、Aチームの実行委員の生徒達の声援が聞こえてくる。 差は広がりも縮まりもしないまま、カーブに差しかかったところで、俺は外側から追い抜こうと勝負をかけた。 抜かれまいとペースを速めた青山は、足がもつれたのか転びかける。 「うわっ。」 青山にぶつかりそうになり俺も転びかけるが、何とか転ばずに体勢を立て直した。 青山も、ぐ、と踏みとどまって転びはしなかったものの、その時にサポーターをはめている方の足に体重がかかってしまったようで、そこから青山の走りが少しおかしくなってきた。 そして、カーブを終えた直線で、ついに俺は青山を抜かした。 わあっ、とより一層、声援が大きくなる。 ペースダウンした青山が気になって俺は、ちらり、と後ろを振り返った。 青山は俺のすぐ後ろを、必死な顔をして走っている。 ……何とか、最後まで走れそうだな……。 安心した俺が顔を前に戻したその時、突然ザザッと砂を滑るような音が後ろから聞こえてきた。
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