体育祭

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「…先生とずっと一緒に、いられるなんて…」 無意識に零した自分の言葉に、佐伯はカアッと顔を赤く染める。 「あっ、あの…別に、この子にヤキモチ妬いてるとかじゃ、ありませんから…」 「……」 「ただ…その…ちょっぴり羨ましかっただけです…」 羞恥を誤魔化すように、佐伯は箱の中から子猫を抱き上げた。 子猫を胸に抱える佐伯を、俺は後ろから腕をクロスさせてフワリと抱き締める。 「…俺だって、本当はそうしたいよ…」 「…せんせ…」 「コイツじゃなくて、本当は佐伯を連れて帰りたい…」 ――カリ。 「イテ。」 俺の言葉に機嫌を損ねたように、佐伯に抱かれていた子猫が、俺の手を軽く引っ掻いてきた。 「あ、こら、ダメでしょ。先生にそんな事しちゃ。」 佐伯が指で、トンと子猫の頭を軽く叩く。 子猫は佐伯に叱られて、シュンとして小さくなってしまった。 俺は佐伯から子猫を奪い取ると、目線を合わせるように高く抱き上げて話しかけた。 「冗談だよ。ちゃんと泊めてやるって。」 「ミャー」 「だから、しばらくおとなしくしてろよ。」 「ミ」 子猫は分かった、とでも言うように、俺の手をペロリと舐めた。
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