体育祭

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箱の中に子猫を戻して、俺は佐伯に尋ねた。 「…そう言えば、俺に用があったんじゃないの?」 「用っていうか…あの…どうしても早く見たくなっちゃって…」 「見たいって…写真?」 「…はい。」 佐伯が、恥ずかしそうに頷いた。 「先生と一緒に写った写真…どんな風に撮れてるのか気になって…」 「いいよ。じゃあ、そこに座って。俺も、カメラ班が他にどんな写真を撮ったのか、見たかったんだ。」 「はい。」 俺はキャスター付きの椅子に座ると、佐伯の隣りまで移動した。 2人でおでこをくっつけるようにして、俺の手に持ったデジカメの液晶画面を覗き込む。 撮影された写真を順番に見ていくと、まるで寄り添うようにして、ぴったりとくっついた体勢で、 カメラに向かってピースサインを向ける俺と佐伯の写真が、画面に映し出された。 佐伯の真っ赤になって固まったその顔に、俺は思わず、ぷっ、と吹き出してしまう。 「佐伯、カチカチだな。」 「っ…だっていきなり、だったんだもん。先生とこんな風にみんなの前で堂々と、なんて初めてだったから……」 佐伯はその時の事を思い出したように、恥じらうような表情をみせる。 ……そういうとこが、可愛いんだよな……。 佐伯の恥じらう様子に俺は口元を緩ませながら、デジカメを操作して、次の写真を表示させた。
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