体育祭

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「…せんせ?」 「……」 「どうしたの?先生…」 佐伯は不思議そうに小首を傾げて、俺の瞳をじっと見つめている。 ……あー、もう、ほんと可愛いな。 冗談抜きで、猫じゃなくてお前を連れて帰りたいよ……。 愛おしむように、頬や顔の輪郭を指で優しくなぞると、佐伯はくすぐったそうに目を細めた。 その仕草が箱の中の子猫と被って、俺は、ふ、と小さく笑った。 * * * 数日後。 社会科準備室で長時間パソコンに向かっていた俺は、いったん手を止めて、ぐっと伸びをする。 「あー、疲れた。」 ぼそっと独り言を零した後、俺は引き出しを開けてスケジュール帳を取り出した。 カバーに挟んである2枚の写真を手に取って、少しの間それを眺める。 体育祭の時に撮った佐伯とのツーショットの写真を見ているだけで、自然と心が和んで疲れが吹き飛んでいく。 写真の中の佐伯に癒やされた俺は、またパソコンに向かって仕事を続けた。 写真のおかげで気分がリフレッシュしたのか、さっきよりも効率よく作業がはかどっている。 ……結構、効果あるな、これ……。 自宅用にもプリントしようかな、と考えながら、俺は残りの仕事をさくさくと片付けていった。 END
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