複雑なオトコゴコロ

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「奈央、それ水着のあと?」 「え?ううん、違うよ。これはサッカー焼け。」 「村松くんの試合の応援?」 「うん。最近、土日どっちかは、必ず試合があるから。」 奈央は、サッカー部の村松くんと付き合っている。 「この前の試合の日、もー、すっごく暑くて。 マキシ丈のキャミソールワンピースを着て、パーカーを羽織ってたんだけど……暑くなってきて、途中でパーカー脱いじゃったの。そしたら、ほら見て。」 「わ、くっきり、だね。」 奈央が、ブラの肩紐を指で少しずらしてみせると、肩のあたりに、白い肌と焼けた肌の色との境界線ができている。 「……そうだ。聞いてよ、美和子。」 奈央が突然、むうっ、と膨れっ面になって言った。 「そのワンピね、前にデートした時に着てたら、村松くんが『可愛い』て言ってくれたの。」 「うん。」 「それなのに、試合終わって競技場の外で待ち合わせしてたら、いきなり不機嫌になって、パーカー着させられて……『もう試合にそのワンピース、着てくるな』て。」 「え、どうして?」 「分かんない。何で?て聞いたら、『お前はオトコゴコロが分かってないっ』とか言っちゃって……」 「……オトコゴコロ?」 「ほんと男子って、意味不明だよね。」 奈央は、呆れたようにため息をついてみせた。
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