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「……あれ?堂本先生、この日、休みなんだ。」
日程表を見ていた2年生の部員の1人が、備考欄に『堂本先生休み』と書いてあるのを見て、意外そうに声をあげた。
「珍しいよな、堂本先生が部活に来れないなんて。」
「風邪ひいて熱があっても、マスクして来るのに。」
「ああ。その日、娘さんのピアノの発表会なんだって。」
「へえ。堂本先生も、いいパパしてるんだな。」
「つーか、メロメロでしょ。携帯の待ち受けも、奥さんと娘さんの写真だし……」
部員達がワイワイ話していると、滝沢先生がさらっと付け加えた。
「……ちなみに。この日は、俺が休みだから。」
……えっ?いつ?
日程表をしっかりと見ていなかった私は、備考欄に注意しながら、もう一度よく見てみる。
すると8月のある日にちの備考欄に、確かに『滝沢先生休み』と書かれていた。
「滝沢先生は、この日、何かあるんスか?」
「ん。ちょっと、な。」
「ちょっと、て?」
「プライベートな事だから、教えてやらない。」
「えー何だよ、それ。」
仲良く部員達とじゃれ合う滝沢先生を、私はモヤモヤした気持ちで見つめていた。
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