5283人が本棚に入れています
本棚に追加
滝沢先生が部活を休むというその日は、私の誕生日だった。
何か特別なことをして欲しかったわけじゃないけれど……、
誕生日くらい、ほんの少しでいいから、先生と2人で会いたかったな……。
予定があって会えないのなら、そうやって言ってくれてもいいのに……。
―――それとも、先生……その日が私の誕生日だって事、忘れちゃったのかな……。
日程表から顔をあげると、滝沢先生と視線がぶつかる。
ちょっぴり拗ねた私は、じっ、と瞳で訴えかけたあと、ぷい、と視線を逸らした。
「……」
先生は、何か言いたげな顔をして近寄って来ると、さり気なく私と奈央の正面に立った。
誕生日に会えなくなった事について何か言われるんだと思った私は、小さく身構える。
けれども先生は、私の頭にポンと手を置くと、私ではなく奈央に向かって声を落として話しかけてきた。
「神崎。悪いな、この日。1人だと忙しくなると思うけど、佐伯のこと1日借りるよ。」
「大丈夫です。私、この日は何があっても絶対に休みませんから。だから、安心して休んじゃって下さいね。」
「ん、サンキュ。けど、体調が悪いとか、どうしても休まなきゃいけなくなったら、言えよ。」
「はーい。」
「えっ……あの……」
話が見えずに、オロオロとして先生と奈央の顔を見比べていると、奈央は驚いた様子で「えっ」と声をあげた。
最初のコメントを投稿しよう!