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「どこか、行きたい場所とかある?やりたい事でもいいし、言ってくれれば……」
「……」
「……どうかした?」
ぼんやりと考え込んでいると、先生が私の顔を覗き込んでくる。
「あ、いえ……あの……ほんとにいいのかな、て……」
「何が?」
「……だって、わざわざ部活を休んでもらうなんて……」
「なんだ、そんな事考えてたのか。」
先生は、くす、と小さく笑って私の頭をぽんぽんと撫でた。
「今回は元々、堂本先生から言ってきたんだ。どこか好きな日に休みを取ってくれ、て。
たぶん、自分だけ夏休みを取るのは気が引けたんだろうな。
だから、佐伯はそんな事気にする必要ないよ。」
「はい。」
先生と過ごす誕生日を想像して、私は顔をとろけさせる。
「……佐伯、」
「はい。」
「何、考えてるの?」
「え?」
「顔、トローンてしてる。」
「あ……あのっ、何でもないです……」
「何だよ、気になるだろ。」
「……その……嬉しいなって思って……。
部活のある日だし、誕生日に先生と2人で会えるなんて、思ってなかったから……」
「……」
私の言葉を聞いた先生は、照れを隠すようにムスッとした顔をして、そっぽを向いた。
「……せんせ?」
気になって呼びかけると、先生は顔を背けたまま、左手を伸ばして私の右手をぎゅっと握り締めてきた。
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