複雑なオトコゴコロ

20/60
前へ
/388ページ
次へ
不意打ちに手を握られてドキドキしていると、先生は照れたように、ぼそっと呟く。 「……これくらいの事で、そんな嬉しそうな顔するなよ……」 「だって……嬉しいんだもん。 私、先生がこの日に部活を休むって聞いた時、何か他の用事があるんだと思ったから、会ってもらえないのかと思って……」 「……あー、それで……」 「え?」 「それでさっき、俺が日程表配ってた時、イジケた顔してたんだ。」 「ご、ごめんなさい……だって私、てっきり……」 さっきの子供っぽい自分の態度が恥ずかしくて真っ赤になって俯くと、先生は繋いだ手を、ぐいっと引っ張って私を引き寄せた。 「……あの日に他の用事なんて、入れるはずないだろ……」 耳元で囁かれる先生の声が、私の鼓膜をくすぐる。 「お前の誕生日は、俺にとっても特別な日なんだから……」 「っ……」 「まさか休める事になるとは、思ってなかったけどな。 すぐに話さなくて、不安にさせて悪かった。お前も休めるかどうか、神崎に確認してから話そうと思ってたから……」 「……いえ……私こそ……っ……」 先生の唇が一瞬、私の耳たぶに触れ、ビクン、と身体が跳ねる。 「佐伯……相変わらず敏感だね、ここ……」 先生は煽るように耳に、ちゅ、と音を立ててキスをしてくる。 「……や……先生……イジワル……」 「……部活サボる言い訳、ちゃんと考えておけよ……」 過敏に反応する私を見て先生は、クスッと満足そうに笑うと、もう一度耳たぶにキスを落とした。
/388ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5283人が本棚に入れています
本棚に追加