複雑なオトコゴコロ

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「奈央、食べ終わってからでいいから、これ付けてくんない?」 見ると、村松くんの制服のシャツのボタンが取れてしまっている。 「このまま持って帰ると、ボタン無くしそうだからさ、俺。」 「うん、分かった。帰りまでに付けとくね。」 「サンキュ。あれ……これ、佐伯の弁当?」 村松くんは、机に置かれた私のお弁当を見て言った。 「うん、そうだけど……」 「ふーん、知らなかった。佐伯って、そんなにトマト好きなんだ。」 村松くんは、トマトづくしの私のお弁当を珍しそうに覗き込む。 「違うの……トマトは確かに好きだけど……私……その……今……」 言いにくそうにしている私に気づいた奈央は、小声で村松くんに事情を説明した。 「は?ダイエットなんて必要ないだろ。佐伯、細いくせに……」 「でしょ?まあ、私は美和子の気持ちも分かるけど。 少しでも綺麗になりたいと思うのが、オンナゴコロだもんね。 それに、好きな人にそんな風に言われたら、どうしても気になっちゃうだろうし……」 「……お前ら……オトコゴコロが全然分かってないな……」 村松くんは、はあー、と大げさにため息をついてみせた。 「いーじゃん、ぷにぷにしてる方が。」 「え……」 「男は、ぷにぷにくらいの方が好きなんだって。」 「……で、でもっ、」 「ちょっと触らせてみ?」 村松くんは右手で私の頬を、むにゅっ、と摘んだ。
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