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テニスコートは、じりじりとした太陽の熱をはね返してくる。
朝に感じた体の違和感は、ますますひどくなっていた。
ずっと我慢していたけれど、さっきから何度も立ちくらみがする。
ボールが入ったカゴを持ち上げただけで足元をふらつかせる私を見て、奈央が心配そうに言った。
「美和子、休んでていいよ。」
「ありがと。でも大丈夫。もう少しでお昼休みだし……」
そう言いかけた時、私の手からボールの入ったカゴが奪われる。
「大丈夫じゃないだろ。」
横を向くと、いつの間にか隣りに滝沢先生が立っていた。
先生は心配そうに、私の顔を覗き込んでくる。
「気分悪いんだろ?顔色、悪い。」
す、とボールの入ったカゴを持っていない方の手を伸ばして、先生は私のおでこに触れた。
「……熱はないみたいだな……」
先生の手は、そのままスルスルと下りてきて、私の頬をそっと包み込む。
先生は、訝しげに眉をひそめた。
「……この前と触り心地が違う……」
「……」
「……佐伯、お前、ちょっと痩せた?」
「……は、はい。少しですけど……」
「うわあ。美和子、やったねっ。」
奈央が興奮気味に、声を荒げた。
「10日で見た目にも効果が表れるなんて、すごいよ。
ね、ね、私にもそのダイエット方法教えて?トマトダイエットだっけ?」
「あ、うん……」
「ダイエット?佐伯、お前ダイエットなんてしてるの?」
奈央の言葉を聞いて、先生は突然不機嫌な口調に変わった。
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