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「暑い時こそ、しっかり食べないとダメだろ。」
「……はい……」
「……だいたい、何でダイエットなんか……」
「……」
怒ったような先生の顔を見て、私は何も言えなくなってしまう。
叱られた子供のように小さく縮こまっている私を見かねて、奈央が横から口を挟んできた。
「ダイエットて言っても、食事を抜いたりするわけじゃないですよ。ただ、トマトをたくさん食べるってだけで。」
「……」
「美和子、ちゃんとお弁当も食べてました。おかずをみんなトマト味にして……」
「……けど、ダイエットなんてしてるから体調が悪いんじゃないの?」
「……」
「佐伯、無理しないで正直に言えよ。気分悪いの?」
「……今朝起きた時から体がだるくて、食欲もなくて。今は少し立ちくらみがします……」
「朝食は?」
「……トマトジュースは飲んできました。」
「……」
「……」
先生は、あきれたようにため息をついた。
「……佐伯、今日はもう帰っていいよ。」
「……え……」
「倒れたりしたら、みんなに迷惑だしな。」
「っ……」
「帰ってゆっくり休んで体調整えて……しっかり食べられるようになってから、来てくれればいいから。」
先生はそのまま私と目を合わせることなく、くるりと背を向けて離れていった。
「堂本先生。ちょっといいですか……」
滝沢先生は堂本先生のところにいって、話をしている。
私はそれを、涙で歪んだ視界のまま見つめていた。
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