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* * *
「熱中症かもな。」
堂本先生にも帰った方がいいと言われ、私はおとなしくその言葉に従った。
堂本先生にもらったスポーツ飲料を飲んでから、小さくため息をつく。
『……佐伯、今日はもう帰っていいよ。』
『倒れたりしたら、みんなに迷惑だしな。』
さっきの滝沢先生の言葉を思い出してまた、じわっ、と涙が浮かんできた。
少し突き放すように、怒ったような口調でそう言った滝沢先生は……私と目も合わせてくれなかった。
あんなに怒った顔の滝沢先生は初めてで、私は悲しくなってしまう。
先生に少しでも可愛いと思ってもらえるように、
痩せて綺麗になろうとダイエットしてたのに……最悪……。
ず、と鼻をすすって、タオルで涙を拭く。
泣いたからか、頭も痛くなってきた。
……気分悪い……早く……横になって寝たい……。
よろよろとした足取りで更衣室を出ると、強引にカバンが奪い取られる。
「え……滝沢先生……」
「……」
先生は不機嫌な瞳のまま、私の背中にそっと手を添えた。
「……車……こっちだから……」
「……え……」
「送ってやる。堂本先生にも、了解取ってあるから。」
「そんなっ……大丈夫です、私……」
「そんなふらついた歩き方して……1人で帰せるわけないだろ。」
「……ごめんなさい……」
「病院は、午前の診療時間に間に合わないよな。救急に行くなら寄っていくけど……」
「いえ……早く帰って、寝たいです……」
「……じゃあ、家まで送っていく……」
先生は私を気遣いながら、ゆっくりとした歩幅で駐車場まで歩いてくれた。
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