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何となく気まずい雰囲気のまま、先生と私は一言も話さずに駐車場に着いた。
いつものように助手席のドアに手を伸ばそうとすると、先生は後部座席のドアを開ける。
「乗って。」
「え……」
「ほら、早く。」
「……」
……いつもなら隣りに座らせてくれるのに、どうして……。
半泣きになりながら、潤んだ瞳で訴えかけるように見上げると、不機嫌そうだった先生の口元がわずかに緩む。
「そんな目で、見るなよ。」
「……だって……」
「後ろの方が、ゆったり座れるだろ。」
「あ……」
怒ったような態度をしていても、先生は私のことを心配してくれているのだ。
そのことが分かり、先生の優しさに胸の奥が熱くなってくる。
「……背もたれ、このくらいの角度でいい?もっと倒したいなら……」
後部座席の背もたれを調整してくれる先生に、私は素直な気持ちを伝えた。
「……せんせ……」
「何?」
「……心配かけて……ごめんなさい……」
「……」
先生は後部座席に潜り込ませていた身体を外に出すと、黙ったまま私の頭をクシャッと撫でてくれた。
その手つきがあまりにも優しくて、私は泣きそうになる。
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