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俯いて必死で涙が出そうになるのを耐えていると、先生がぼそっと呟くように言った。
「……俺も……さっきは言い過ぎた……」
「……え……」
「……その……強い言い方して……ごめん……」
「……」
先生の言葉に、耐えていた涙がぶわっと溢れ出す。
「ほら、もう泣くなって。」
「……」
「な?」
先生は少し屈んで、指で私の涙を拭ってくれた。
「……せんせ……」
「ん?」
「……私、やっぱり……こっちがいいです……」
まだ潤んだ瞳のまま、私は助手席のドアに手をかけて先生を見上げた。
「……隣りに座ったら……ダメですか?」
「……佐伯……」
「……ね……お願い……」
「……」
先生は困ったような顔をして小さく息を吐くと、後部座席のドアを閉めて助手席のドアを開けてくれた。
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