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ぐったりと助手席のシートに身体をあずける私を見て、先生は心配そうに言った。
「……だいぶ、辛そうだな……」
「……大丈夫……です……」
「そんな顔で言われても、全然説得力がないんだけど……」
トロンとした目つきで力なく見上げる私を見て、先生はため息をついた。
「水分は摂れてるの?」
「……さっき、堂本先生に貰ったスポーツ飲料を……少し飲みました……」
「食欲はある?何か食べたい物があるなら、途中で買っても……」
「何も……食べたくありません……」
「……もしも水分も摂れないようなら、病院で点滴してもらった方がいいな。食べれない時は必ず午後の診療に行くんだぞ。」
「……はい……」
ぼんやりと窓の外を眺めると、もうあと少しで私の家、という所まで来ていた。
ごそごそとカバンの中を探って、すぐに開けられるように家のカギを準備していると、先生が怪訝そうな顔で尋ねてくる。
「お家の方、出かけてるの?」
「……はい……」
「何時頃戻ってくる?」
「何時頃っていうか……今日は戻って来ないです……」
「は?」
「お父さんとお母さん、昨日から京都のお姉ちゃんとこ行ってて……明日の夕方まで帰って来ないから……」
「……」
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