複雑なオトコゴコロ

33/60
前へ
/388ページ
次へ
ぐったりと助手席のシートに身体をあずける私を見て、先生は心配そうに言った。 「……だいぶ、辛そうだな……」 「……大丈夫……です……」 「そんな顔で言われても、全然説得力がないんだけど……」 トロンとした目つきで力なく見上げる私を見て、先生はため息をついた。 「水分は摂れてるの?」 「……さっき、堂本先生に貰ったスポーツ飲料を……少し飲みました……」 「食欲はある?何か食べたい物があるなら、途中で買っても……」 「何も……食べたくありません……」 「……もしも水分も摂れないようなら、病院で点滴してもらった方がいいな。食べれない時は必ず午後の診療に行くんだぞ。」 「……はい……」 ぼんやりと窓の外を眺めると、もうあと少しで私の家、という所まで来ていた。 ごそごそとカバンの中を探って、すぐに開けられるように家のカギを準備していると、先生が怪訝そうな顔で尋ねてくる。 「お家の方、出かけてるの?」 「……はい……」 「何時頃戻ってくる?」 「何時頃っていうか……今日は戻って来ないです……」 「は?」 「お父さんとお母さん、昨日から京都のお姉ちゃんとこ行ってて……明日の夕方まで帰って来ないから……」 「……」
/388ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5283人が本棚に入れています
本棚に追加