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私の部屋の前まで来ると、先生はそっと私を降ろして廊下に立たせた。
捲れ上がっていた制服のスカートを直していると、スポーツ飲料の入ったペットボトルが差し出される。
「これ、すぐに飲めるように手の届くところに置いておけよ。」
「はい。」
「楽な服装に着替えて、横になって休んでて。なるべく早く戻ってくるから。」
「え……」
「食べ物とか飲み物とか……必要そうな物、買ってきてやる。」
「そんなっ……悪いです。先生にそこまでしてもらうなんて……」
私がちゃんと体調管理できてなかったせいで、先生にいっぱい迷惑かけて、心配かけて……。
……これ以上、先生に迷惑かけたくない……。
「1日くらい、1人で……大丈夫ですから……」
遠慮する私に、先生はムスッとした顔をして言った。
「俺は……佐伯にとって、ただの"先生"じゃないだろ?」
「っ……」
「だったら、これくらいさせろよ。」
「……先生……」
「このカギ、少しの間借りるぞ。玄関も閉めとくから。1人で絶対に階段降りたりするなよ。」
「……はい……」
玄関のドアが、カチャと静かに閉められる音が聞こえる。
部屋の窓から私は、先生の車が見えなくなるまで見送っていた。
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