複雑なオトコゴコロ

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「……佐伯……」 頭の上から、いつもより甘く掠れた先生の声がおりてくる。 「……あんまり心配させるようなことするなよ……」 「……先生……」 「もうダイエットは禁止。いいな。」 「はい……」 心底心配している様子の先生に、鼻の奥がツンとしてくる。 「ごめんなさい……心配かけて……」 「ん……」 素直に謝ると、先生が抱き締める腕にほんの少し力を込めてきた。 「……佐伯はダイエットなんてする必要ないよ……今のままで……」 「……」 「……少なくとも、俺は気に入ってる……」 「っ……」 「めちゃめちゃ抱き心地いいもん、お前……」 「……」 「……どこ触っても、柔らかくて、気持ちいいし……」 「っ……触っ……」 な、何か今の言い方……えっち……。 ぼぼぼ、と真っ赤になった私の顔を、先生が後ろから覗き込んでくる。 「何、赤くなってんの?」 「っ……だって……」 恥じらう私を見て、先生はたまらないといった顔をして言った。 「……可愛い……その顔……」 「……や……恥ずかし……」 「だめ。もっと見せて……」 先生が話す度、漏れた息が私の耳元を撫でて、 ぞくぞくとした感覚に自然と目が潤んでしまう。 甘い感覚に耐えるように、 身体にぎゅっと力を入れて目を瞑った瞬間、 待ちきれんと言わんばかりに先生が私の唇を塞いだ。 とろけるように甘く優しいキスに、私はゆっくりと身体の力を抜いていった。
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