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……先生……今の、て……、
ずっと先の未来には、先生と私は一緒に暮らしてるってこと……?
嬉しさが一気にこみ上げてきて、私は何だか泣きそうになってしまう。
「……食欲がないときに食べられそうって言ったら……まあ普通に梅干しとおかゆかな。
あ、そうだ。飲み物ならあった。
俺、風邪ひくと無性にリンゴジュースが飲みたくなるんだよな。果汁100%のやつじゃなきゃダメなんだけど……」
自分の発した発言の重みに気づいていないらしい先生は、真剣に"とっておき"について考えていたが、
胸に手を当てて目を潤ませる私に気づいて、ぎょっとした顔をして聞いた。
「……佐伯?」
「……」
「どうした?気分が悪いのか?それともどこか痛いとか……」
「……違います……」
「でも……目が潤んでる……」
「あ……」
ゴシ、と涙を拭ってから私は、先生を心配させないように、にっこりと微笑んでみせた。
「心配しないで下さい。これは……嬉し涙ですから。」
「何?嬉し涙って、どういうこと?」
「……それは……秘密です。」
「何だよ、気になるだろ。」
「……いつか……私が……先生の"とっておき"が分かるようになったら……教えてあげます……」
「……」
私の言葉を聞いた先生は、ふっ、と小さく笑った。
先生は私の正面に座って視線を合わせると、真っ直ぐに私を見つめてくる。
潤いのある綺麗な瞳に捉えられて、私は身動き1つできなくなってしまう。
「……生意気。」
先生は私の頭をくしゃくしゃ、と撫でると、ちょっとイタズラな表情を浮かべて言った。
「約束だぞ。その時は絶対に教えろよ。」
私の瞳から、一粒の涙が流れ落ちる。
声にならずコクンと頷くと、先生は優しく指先で涙を拭ってくれた。
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