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たぶん、軽い熱中症か貧血だったのだろう。
早めに水分補給をして体を休めたせいか、私は1日ゆっくり休んだだけで、すっかり良くなった。
今日は部活が終わってから、奈央と2人で水着を買いに行くことになっている。
「ね、これ可愛いと思わない?私、こういうのにしようかな。」
先に着替え終わった奈央が、カバンから雑誌を取り出してあるページを私に見せてきた。
それは夏休み前に私が亜紀ちゃん達と見ていた、水着特集が組まれた雑誌だった。
奈央が指を差した水着を見て、私は「あれ?」と声をあげる。
「奈央、ビキニにするの?村松くん、ダメって言ってたのに……」
「……うん……」
奈央はちょっと顔を赤らめて恥ずかしそうな表情を浮かべると、他の人に聞こえないように声を落として言った。
「今度一緒にプールに行く約束したの。そしたら村松くん、『一緒に行くならビキニがいい』て言い出して……」
「……え……だってあんなに反対してたのに?」
「でしょ?自分も一緒に行くなら、いいんだって。もう、ほんと男の子って意味不明だよね。」
奈央はそう言うと呆れたように肩をすくめて、また雑誌に目を向ける。
「わ、これも可愛い。こういうの、美和子に似合うんじゃない?」
「……でも私、ビキニは……」
『ビキニなんて、やめたら?まだ高校生なんだし、さ……』
夏休み前に先生に言われた言葉が気になって、私はビキニを買うかどうか決めかねていた。
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