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更衣室を出てテニスコートの前を通ると、
サッカー部の練習を終えた村松くんが、滝沢先生と話をしている姿が見える。
村松くんは奈央に気づくと、ブンブンと手を振ってきた。
「2人とも、お疲れっ。」
「え……あれ?」
村松くんを見て、奈央は不思議そうに首を傾げた。
「村松くん、何で待ってるの?
今日は美和子と水着を買いに行くから、一緒に帰れないって言ってあったよね?」
「いや、うん、そうなんだけどさ……その……やっぱり俺も一緒に行ったらダメ?」
「え?」
「俺が奈央に似合うビキニをバシッと選んでやるからさ。な?」
「……ビキニ?」
先生が村松くんの言葉に敏感に反応する。
「あ、この2人、今年はビキニに挑戦するらしいですよ。」
「……」
「一緒に行って、村松くんが選ぶの?」
「おうっ。」
ややテンション高めで話す村松くんの隣りで、先生は不機嫌な顔で、じ、と私を見つめる。
「……佐伯もビキニを買うんだ……」
「え、えっと私はまだ、ビキニに決めたわけじゃ……」
「……ふーん……」
「……」
……う……何か目に見えない圧力が……。
私は先生から逃げるように視線を逸らすと、奈央の方を向いて言った。
「ね……奈央、村松くんと買いに行くなら私はまた今度でいいよ?」
奈央は少し考えて、すぐに首を横に振った。
「ううん、美和子と行く。
ほら、よく彼氏が更衣室の外から頭だけカーテンの中に突っ込んで、彼女の水着を選んでるカップルいるでしょ?
私ああいうの、ちょっと苦手っていうか……」
「…………あれこそ、男のロマンだよな…………」
村松くんは、うっとりと遠くを見つめて言った。
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