複雑なオトコゴコロ

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『彼女がビキニを着るのを嫌がる男なんて、いるわけないだろ。』 ……村松くんは、ああ言ってたけど、 先生は私がビキニを着るのを嫌がってるよね……。 『ビキニなんて、やめたら?まだ高校生なんだし、さ……』 あの時の先生の不機嫌な顔を思い出して、私は小さくため息を吐いた。 ……先生が反対してるなら……やっぱりビキニはやめとこうかな……。 ……本当はビキニって、大人っぽくて憧れだったんだけど、どうしてもビキニじゃなきゃダメってわけじゃないし。 先生の反対を押し切ってまで買わなくても、ね……。 自分の中でそういう結論に達した私は、すす、と動いてさり気なく先生の隣りに立った。 一緒にビキニを買いに「行く」「行かない」で揉めている村松くんと奈央を眺めていた先生が、クスッと笑って私に話しかけてくる。 「……村松、すっごい必死だな。」 「そうですね。」 「まさか"男のロマン"とか"オトコゴコロ"とかいう単語が、あいつの口から出るとは思わなかったよ。 あいつ、結構理論派だな。 しかも言葉で理論的に説得するだけじゃなくて、時々甘えるようにねだったりして……なかなかの交渉上手じゃん。 もうすぐ神崎が折れるんじゃないの?」 「ふふ、そうかも。 さっきのオトコゴコロについて語ってた村松くん、妙に説得力があったから……」 そのまま交渉の行方を見守っていると、先生がちょっと言いにくそうに口を開いた。
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