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「……で?佐伯は誰と行くの?」
「え?」
「……海かプールか知らないけど、行くんだろ……水着を買おうとしてるってことは……」
「あ、いえ……はっきりとは何も……」
「……神崎と村松と……その……村松の友達と一緒に行くんじゃないの?」
先生は不機嫌な声でそう言うと、真剣な顔つきで、じっと私を見つめて言った。
「油断するなよ。」
「……油断、て?」
「いくら村松の友達だからって、相手は男なんだから。
ちゃんと警戒しろよ。」
「……警戒って、私、別に……」
「他にも男がいっぱい来てるんだし、どこで誰に見られてるか分からないんだからな。
だいたい佐伯は、普段から警戒心無さすぎなんだよ。もっと気をつけないと……」
「あの……先生……誤解してますよ。」
「は?」
「私……村松くんとも、その友達とも約束なんてしてないです。
奈央と『行きたいね』て話してたんですけど……奈央は村松くんと約束してるみたいだし、私は今年は行かないかも……」
「……。何だ……そっか……」
先生は一瞬拍子抜けしたような顔をしたあと、バツが悪そうに鼻の頭を、ポリ、と掻いて言った。
「……悪い。勘違いした。俺、てっきり……」
「いえ……」
所在なさげにしている先生が可愛くて、自然に緩む口元をグーにした手で隠しながら、私はぽろりと本音を零した。
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