5283人が本棚に入れています
本棚に追加
「……でも、いいな……。
私も今年の夏、どこか行きたいなあ……海とかプールとか川とか、そういう夏っぽい所に……」
「……」
言ってしまってから、はっと気づく。
……やだ、私ってば。
これじゃ先生に「連れて行って」ておねだりしてるようなもんじゃない。
プールとか海とか、それこそ誰に見られるか分からないんだから。
我が儘言って、先生を困らせたらダメなのに……。
私の言葉を聞いた先生は、ちょっと考えるような素振りを見せたあと、少し体を傾けて私の耳元に顔を近づけて言った。
「……じゃあ、行こっか。」
「え……」
「……お前の誕生日に、そういう夏っぽい所に……」
「……でもっ……」
躊躇う私の心を見透かすように、先生は私の頭をクシャッと撫でる。
「……大丈夫だって。ちょっと遠い場所を選べば、知り合いに会うこともないだろうから。」
「……ほんとに、いいの?」
「その代わり、早起きしてもらう事になるからな。覚悟しとけよ?」
「はいっ。」
ぴょこんと弾むように返事を返した私の頭の中は、先生と過ごす誕生日の事であっという間にいっぱいになっていく。
最初のコメントを投稿しよう!