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「……せ、先生、私がビキニを着るのに反対なんじゃ……」
予想外の言葉に動揺する私に向かって、先生は平然とした顔をして言った。
「反対なんてしてないよ。
高校生だからって、ビキニを着たらダメ、なんてことないし。」
「え……で、でもっ……」
「それに……」
先生は、ニコッと微笑んで私に向かって言った。
「彼女がビキニを着るのを嫌がる男なんて、いるわけないだろ。」
「……」
「どんなビキニにしたか教えるなよ。当日の楽しみに、とっておくから。」
「……」
結局、村松くんと奈央は、一緒に買いには行かないけれど村松くんの希望を取り入れる、という中立案に落ち着いたらしい。
「この中なら、やっぱこれかな……あーでも、こっちも奈央に似合いそうだし……」
水着特集の載った雑誌を広げている村松くんと奈央に、先生は声をかけた。
「それじゃあ、俺、職員室に戻るから。村松も神崎も早く帰れよ。」
「はーい。」
「お疲れ様です。」
「佐伯も、お疲れ様。」
「……お疲れ様……です……」
スタスタと歩いて遠ざかっていく滝沢先生の背中を、私はすっかり脱力して見つめた。
―――オトコゴコロは複雑です。
END
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