誕生日の約束

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ぎりぎりのところで知りたいという欲望を抑え込んで、私はその本を平台の元の場所に戻した。 すると横から手が伸びてきて、今置いたばかりの本が取り上げられる。 「何の本?随分、真剣な顔して読んでたみたいだけど。」 「あ、先生……」 「『君のいる海』……恋愛小説?」 「はい。それ、今ドラマ化されててすごく話題になってるんですよ。私も毎週、楽しみにしてて……」 「ふーん……」 先生は興味なさそうに、パラパラとページを捲った。 「どこまで読んだ?」 「えっと、第6章の途中まで……」 「そんなに?悪い。結構待たせちゃったな。」 「いえ……それに、その本を読んでたらあっという間でした。」 「買わないの?」 「買いません、今日は。」 「何で?俺が来たことにも気づかないくらい、メチャメチャ入り込んで読んでたのに。」 「先のストーリーが分かるとドラマを観る楽しみがなくなっちゃうから、ここまででやめておきます。」 「そのドラマ、そんなに面白いんだ。どんな話?」 「あ、えっと……あるサイトで知り合った2人が、だんだんお互いに惹かれていく話で……」 先生に、私は前回までのドラマの内容を簡単にかいつまんで聞かせた。
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