誕生日の約束

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「……で、手がかりになるその、きゅっ、きゅって音が何の音なのか、私全然わからないんです。」 「ふーん……」 「それにラストはどうなるのか、すごく気になっちゃって。 あんなに想い合ってて、お互いに大切な存在になってるんだもん。ハッピーエンドで終わって欲しいなあ……え……ちょっ、先生、それ最終章ですよ?」 はっと気がつくと先生は、パラパラとページを捲って最終章のページを開いている。 「ん。佐伯が気になるって言うから、ラストがどうなるのか教えてやろうと思って。」 「なっ、いいです。教えてくれなくて……」 「何で?ラストがどうなるか知りたいんだろ?俺もその音が何か知りたいし……、 あれ?最終章には何の音なのか書いてないな。1つ前の章かな……」 「せ、せんせっ、」 今にも先生が話してしまいそうな気がして、焦って本に手を伸ばす。 すると先生はそれが分かっていたかのように、ひょい、と私の動きをかわして本を持つ手を上にあげると、読んでいた本をパタンと閉じた。 「冗談だよ。そんな必死にならなくても。」 「も、もうっ、」 むー、と膨れた私の顔を見て、先生は可笑しそうにクッ、クッと笑った。
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