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遅れがちな私を気遣うように先生が立ち止まった。
「どうした?疲れたの?」
見上げると、先生の潤いのある綺麗な瞳が私の瞳の奥を、じ、と見つめている。
「……先生、私まだ……」
言いかけて私は、きゅっと唇を軽く噛んで、出かかった言葉を飲み込んだ。
……まだ帰りたくないなんて言ったら、きっと先生を困らせてしまう……。
「……何でもないです。風が気持ちいいですね。」
気持ちを隠すように微笑んでから、先生の隣りに追いついて歩き出そうとした時、
コツンと私の手が先生の手にぶつかってしまった。
「あ、ごめんなさいっ……」
何だか恥ずかしくて真っ赤になって謝ると、先生はちょっとからかうように私の顔を覗き込んでくる。
「手、繋いでくるのかと思った。」
「ち、違いますっ、そんな事しません。だって、もしも誰かに見られたら……!……」
突然、ぎゅっと手を掴まれる。
先生は私の手を優しく包み込むように握り直すと、さっきよりもゆっくりと歩き出した。
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