誕生日の約束

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「我が儘だ、てわかってるんですけど……」 「うん。」 「……まだ帰りたくないな、て……」 「……」 「欲張りですよね、こんなの。先生はこうやって2人で会ってくれてるのに……。 でも……足りなくて……もっと一緒に居たくなっちゃって……それで……」 言いながら、だんだん恥ずかしさがこみ上げてくる。 ……こんな、子供が駄々をこねるみたいなこと言って、先生きっと呆れてるよね……。 小さく俯いた私の頭を、先生は優しくクシャ、と撫でて言った。 「それでさっき、寂しそうな顔してたんだ。」 「先生……気づいてたの?」 「ん、佐伯はわかりやすいから。」 「う……」 「そんな可愛いこと、早く言えよ。」 「っ……でも……先生、困るでしょ?」 「……そうだな。確かに今少し困ってる……」 「ほら、やっぱり……」 「そういう意味じゃなくて……」 先生は繋いだ手を引き寄せて私との距離を詰めると、声を落としてそっと囁いた。
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