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「ちょっとだけ寄り道しようか。さっき、通り沿いにベンチがあっただろ。あそこで話そう。」
「え……いいの?」
「少しだけ、な。遅くなると佐伯のお家の方が、心配するだろうから……」
少し歩くと、桜の木の陰に隠れるようにベンチが置かれているのが見えてくる。
「佐伯、こっち。」
ベンチの前まで来ると、先生は繋いだ手の力をそっと緩めた。
「あ……」
離れそうになった先生の手を、思わず両手でぎゅっと握り締める。
「どうしたの?今日は甘えん坊だね。」
先生はクスリと笑って、もう一度手を繋ぎ直してくれた。
先生の優しさに、ほわっと心が温かくなっていくのを感じる。
こうやって先生はいつも、私の寂しさに気づいてくれる。
先生のくれた言葉は、私の寂しさを埋めるのに充分すぎるもので、
とろけるくらい甘くて、
泣きたいくらい幸せで、
――先生、大好き……。
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