誕生日の約束

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* * * お風呂から出た私は、パタパタとスリッパの音を響かせてリビングのドアを開けた。 『君のいる海』のドラマが、もうすく始まる時間なのだ。 「もう始まった?」 「ううん、まだ。ぎりぎりセーフ。ここ座ったら?一緒に観よ?」 ソファーに座っていたお姉ちゃんが、少し横にずれて場所を空けてくれた。 お姉ちゃんは大学に通うため、京都で一人暮らしをしている。 夏休みを利用して帰ってきていたが、あさって京都に戻る事になっていた。 「よかったー、間に合って。」 軽くタオルで髪を拭きながらお姉ちゃんの隣りに座ると、お姉ちゃんはじっと私を見つめて、んふふ、と意味ありげな笑みを浮かべて言った。 「美和子ちゃん、女っぽくなったね。」 「え……」 「今のタオルで髪を拭く仕草とか、ちょっとドキッとしちゃった。」 「や、やだなーお姉ちゃん、急に変なこと言わないでよ……」 「だって本当のことだもん。」 もう一度、んふふ、と笑ってから、お姉ちゃんは声を潜めて囁いた。
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