5283人が本棚に入れています
本棚に追加
/388ページ
「お疲れ様でした。」
練習が終わり、男子テニス部の部員達が、次々と部室の方へ流れていく。
マネージャーの奈央と私も、その集団の後ろに並んで、テニスコートを後にした。
話しながらゆっくりと歩いていると、後ろから
「お疲れ様」
と声をかけられる。
振り向かなくても分かるその声にドキドキしながら、私はなるべく平静を装って振り向いた。
「お疲れ様です。」
声をかけてきたのは、顧問の堂本先生と副顧問の滝沢先生だった。
「ゆっくり喋ってないで、早く帰れよ。」
「そうだぞ。あっという間に真っ暗になるからな。
神崎は自転車通学だったろ。ライト点けて帰れよ。」
「堂本先生、私、小学生じゃないんだから…分かってますよ。」
堂本先生が奈央に話しかけてる間に、滝沢先生はそっと私の耳元で囁く。
「家着いたら、メールして。」
ちょっと照れながらコクン、と頷くと、滝沢先生は僅かに口元を緩ませてから、
「それじゃ、気をつけて。」
と、普段の先生の顔に戻って、私達を追い越して行った。
ぽっ、と赤くなった私に、奈央がニヤニヤしながら言う。
「美和子って、滝沢先生と2人の時、いつもそんな感じなの?」
「え…そんな感じって…」
「好き、ていうオーラ全開って感じ。」
「な…」
奈央の言葉に、私は焦ったように反論した。
*
最初のコメントを投稿しよう!