5282人が本棚に入れています
本棚に追加
* * *
次の日。
夜の9時を少し過ぎたくらいにお姉ちゃんが帰ってきた。
秋元さんとのことが気になっていた私は、パタパタとスリッパを鳴らして玄関までお姉ちゃんを出迎える。
「お姉ちゃんお帰りっ。あの……秋元さんとは、どうなっ……」
「シュークリーム買ってきたの。美和子ちゃん、一緒に食べよ。」
私の言葉に被せるようにそう言うと、お姉ちゃんは私に顔を近づけて、そっと囁いた。
「……その話はあとで私の部屋でしよ。ね?」
「あ、うん……」
お姉ちゃんから、家のとは違う石鹸の香りがふわりと香ってくる。
……あれ?
何だろ、この香り……。
お花みたいに甘くて、いい匂いで……家の石鹸と違う……。
「手、洗ってくるから、これ冷蔵庫に入れておいて。」
シュークリームの入った箱を手渡したお姉ちゃんに、私はぽつりと素朴な疑問をぶつけた。
「……お姉ちゃん、何かいい匂いする……」
「そう?」
「ん……お花みたいな甘くていい香り……」
「そう言えば『バラの香り』て書いてあった。ボディーシャンプーのボトルに……」
「え……ボディーシャンプーって……」
「あ……」
お姉ちゃんの顔が、ぼっ、と一気に赤く染まる。
「え、えっと……」
「……ご、ごめ……」
……ボディーシャンプー使ったってことは、
つまり……そういう所に……秋元さんと……。
きゃーーーっ。
そこまで考えが行き当たって、私もお姉ちゃんと同じくらい真っ赤になってしまう。
「わ、私やっぱり先にお風呂入ってくるっ。美和子ちゃん、シュークリーム先に食べてて。」
お姉ちゃんは真っ赤になったまま、慌てて廊下の奥の洗面所へと入って行った。
最初のコメントを投稿しよう!