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「…そんな…私、これでも平静を装ったつもり…」
奈央が私のほっぺたを指で、ツンと、つつく。
「美和子、ほっぺたピンクだよ。分かりやすいね。」
「…う…」
「まあ、いいんじゃない。さっき滝沢先生、何か嬉しそうだったし。」
「…ほんと?」
「うん。口元にやけてたよ。2人とも気をつけないと、すぐバレちゃうよ。」
「うん…気をつける…」
滝沢先生と私は、付き合っている。
でもやっぱり、堂々と、という訳にはいかない。
『教師と生徒』の恋愛は、あまり世間体も良くないし、その事が知れ渡れば滝沢先生の立場も悪くなってしまうだろう。
だから先生と私の関係は、みんなには『秘密の関係』なのだ。
************
更衣室で着替えを済ませて、奈央の自転車を取りに行こうと部室の横を通った。
部室の外で、集まって何かの話で盛り上がっていたテニス部の部員が、一斉にこっちを見てくる。
…な…何?
しかもその集団の中に、滝沢先生が混じっている。
滝沢先生は私の方をチラ、と見ると、澄ました顔で言った。
「んー。そんな感じ。」
…そんな感じ、て…
どんな感じ?
キョトンとする私を、テニス部のみんなが「へぇ」とか「ふーん」とか言いながら、露骨にチラチラ見てくる。
「あの…」
気になった私は、城島くんに尋ねた。
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