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「香山先生、するどいな。」
「…やっぱり、何かあるんですね。」
香山先生がほんの一瞬、私に冷たい視線を送ってくる。
それだけで、私はピンときてしまった。
香山先生は、滝沢先生に好意を抱いている。
だから、滝沢先生と親しそうな私のことが面白くないのだ。
滝沢先生は周りを見回してから、秘密を打ち明けるように声を落として、言った。
「…内緒にしてもらえますか?」
「何を、ですか?」
「今から話す事。」
「…はい。」
……滝沢先生、何を言うつもりなの?
不安そうに見つめる私に滝沢先生は、「大丈夫だよ」というように軽く微笑んでみせる。
そして、もう一度香山先生に向き直ると、
「…実は、ですね…」
と、更に声を潜めて話し始めた。
「これは誰も知らない事なんですが…」
「…はい…」
「俺と佐伯は、付き合ってるんです。」
「!」
「……はい?」
「だから、雨を口実に一緒に帰りたいから、降ってくるのを待ってるんですよ。」
「……」
「……」
…せ、先生…何、言って…。
「な?」
……「な?」じゃないっ。
*
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