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私が何と返事を返していいか分からずにいると、滝沢先生はニヤリと意味ありげな顔をして言った。
「お気に入り、ね…まあ、そうかな。」
「…っ…」
「やっぱり。でも、気をつけて下さいね。」
「気をつける?」
「このくらいの年齢の女の子が、先生に憧れることってよくあるんですよ。それに、“憧れ“と“好き“を勘違いしてしまうことも…。
佐伯さんは、ちゃんと分かってると思いますけど…」
「……」
「女性の立場から忠告させて頂きますと…もしも本気にしてしまったら、傷つくのは彼女ですからね。あまり勘違いさせるようなことは、言わない方がいいですよ。」
「それはどうも。でも、大丈夫ですよ。」
滝沢先生は、香山先生に向かってにっこりと微笑むと、私の頭をクシャクシャ、とする。
「俺が本気で言ってるかどうか、佐伯はちゃんと分かってるから。」
「…っ…」
「な?」
……だから、「な?」じゃないっっ。
これ以上ここにいたら、動揺しすぎて香山先生に感づかれてしまいそうな気がして、私は、
「あの…ボールを集めるの手伝ってくるので…失礼します。」
と、慌ててその場から立ち去った。
「ほら、佐伯さん赤くなってたわ。滝沢先生、ダメですよ。子供をからかったりしたら。」
さっきよりも鼻にかかったような声で、滝沢先生に話しかける香山先生の声が、後ろから聞こえてきた。
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