雨の日の秘密

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「佐伯。」 「……」 「…何、考えてる?」 「……」 ――行かないで。 本当は、そう言ってしまいたい。 けれども、先生の“立場“というものがある。 教頭先生に誘われて、断れる筈がない。 言ってしまいたい衝動を抑えて、私は小さく口を開いた。 「……行くんですか?」 「ああ。断る理由もないし、そのつもり。」 「……」 「食事会の話は元々、香山先生の父親が言いだしたらしい。 今回の実習で香山先生を俺が担当しているから、その挨拶も兼ねて実習の様子を聞かせて欲しいらしくて…」 「…そう、ですか…」 「お前が心配しているような話じゃないから……だから、そんな不安そうな声、出すなよ。」 「…え…」 「バレバレ。ほんと、分かりやすいな。」 「…っ」 先生は可笑しそうに、クッ、と笑う。 「…だって、香山先生のお父さんも一緒になんて、まるでお見合いみたいだから…心配になって…」 「うん。」 「それに…香山先生て、綺麗で色っぽいでしょ?」 「まあ、な。」 「だから…先生も、ついフラフラと…」 「………お前ね、何、さり気なく失礼な事言ってるんだよ。」 「…う…だって……」 *
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