雨の日の秘密

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************ お昼休み。 今日はサンドイッチを持ってきたので、それに合う飲み物を買おうと、私は1階に置かれた自動販売機に向かった。 自動販売機の前に立ち、どれにしようか悩んでいると、 「あら、偶然ね。佐伯さん。」 ブランド物のお財布を持った香山先生が、私のすぐ後ろに立っていた。 「あ、香山先生。お先にどうぞ。私、どれにするかまだ、決めてなくて…」 「そう?それじゃ、お先に。」 香山先生は迷うことなく、あの応募シールの貼られた缶コーヒーのブラックを、2本買った。 2本てことは、1本は…。 じ、と缶コーヒーを持つ手元を見つめると、それに気づいた香山先生は、ふふ、と笑って言った。 「これ、滝沢先生に差し入れするの。滝沢先生ね、いつもこれ飲んでるのよ。」 「…そう、ですか…」 「私がコーヒーを淹れてあげるって言っても、絶対に断るの。どうしてだと思う?」 「…さあ…」 「滝沢先生、応募シールを集めてるみたい。」 「え」 「何が当たるのか知らないけど…普段は男っぽいのに、そういうとこだけかわいいなんて、何かズルいわよね。」 香山先生は、ふふ、とまた上品に笑った。 *
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