雨の日の秘密

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「悪気があった訳じゃないのよ。教頭先生に実習の話をしている時、滝沢先生は厳しくないか?て冗談ぽく聞かれて…。 私、『滝沢先生は優しいですよ。私にも生徒にも』て答えたの。それで一例として、雨の日に佐伯さん達を送ってあげた話をしたんだけど…」 「……」 「ごめんなさい、何だか告げ口みたいなことしちゃって。」 「…いえ…それで滝沢先生は教頭先生に、何て言ったんですか?」 「さあ…でも滝沢先生、この事は佐伯さん達に言わないでくれ、て。」 「…先生、が…」 「教頭先生に自分がきちんと話すから、大丈夫だ、て言ってたわ。 たぶん佐伯さん達に、気を使わせたくないのね。 あなた達だって、自分達のせいで滝沢先生の将来がダメになるかも、なんて聞いたら責任感じると思うし…」 「えっ?将来って…どういう事ですか?」 予想外に大げさな言葉が飛び出してきて、私はびっくりしてしまう。 「全部は話せないの。でも少しだけ……教頭先生はね、すごく力を持っている人なの。 将来は学校内にとどまらずに、学校を監視したり指導していく立場なっていくと思う。」 「……」 「教頭先生は、滝沢先生のこと高く評価してるの。 あなたにはまだ分からないかもしれないけど…それって、今後の滝沢先生にとって、すごくプラスになる事なのよ。」 「いえ…分かります…」 「そう?だったら……教頭先生に不信感をもたれるという事が、どういう事か分かるわよね。」 「…はい…」 「そう…良かった。」 香山先生は、にっこりと微笑む。 *
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