雨の日の秘密

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黙ったままの私に、香山先生は言葉を重ねてくる。 「…もしかして佐伯さん、期待しちゃってた?」 「……」 「滝沢先生も悪いのよね。佐伯さんをからかうような事言うから。でも…」 「あの…」 思わず香山先生の言葉を遮ると、私は真っ直ぐに香山先生を見つめて言った。 「私は、そうは思いません。」 「え…」 「滝沢先生は、『高校生だから、相手にしない』なんてことは言わないと思います。」 香山先生の顔が、軽くひきつる。 「…どういう、ことかしら?」 「あの…滝沢先生はいつも、生徒を子供扱いしたりしないで、対等な位置に立って私達と接してくれています。 だから、もしも…生徒の誰かが本気で滝沢先生を好きになって、その気持ちを伝えたら…、 断るにしろ、受け入れるにしろ…本気でその気持ちに向き合ってくれると思います。」 「……」 「あの…ごめんなさい。生意気な事、言って…」 少し黙っていた香山先生は、じ、と私を見据えるようにして口を開いた。 *
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