雨の日の秘密

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「いいのよ。確かに、あなたの言うとおりだわ。 私、どこかで生徒のこと子供扱いしてしまってた。 でも、そんな事ないわよね。もう充分色々な配慮が出来る年よね。」 「……」 「だったら、はっきり言わせてもらうわね。」 香山先生の瞳が、より一層鋭さを増す。 「佐伯さん。あなた、平気で滝沢先生の助手席に座ってるけど、何も考えなかったの?」 「…え…」 「ただ、憧れの先生の隣りに座れて嬉しい…そんな感じ?」 「…はい…」 「嬉しいのは分かるけど…滝沢先生の立場を考えたら、誤解を招かないように後部席に乗るのが当然だとは、思わなかった?」 「…あ…」 「少なくとも私だったら、それくらい考えつくけどな。」 「……」 香山先生の言葉が、ズキ、と私の胸に突き刺さる。 香山先生の言うとおりだ。 私…先生と帰れるのが嬉しくて、 少しでも一緒にいたくて、 先生の立場とか、送ってもらう事のリスクとか、あまり考えずに堂々と助手席に座ってしまっていた。 その事で、いつの間にか滝沢先生を、困らせてしまっていたなんて…。 ごめんなさい…先生…。 私は、罪悪感でいっぱいになってしまう。 *
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