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その日、結局雨はやまず、体育館での練習となった。
練習が終わる頃、奈央が私に耳打ちする。
「本当に乗せてもらわないの?せっかく一緒に帰れるチャンスなのに。」
「うん…」
「わかった。確かに香山先生の言うことも一理あるし…私は美和子に合わせるよ。」
そして、練習が終わる時間になった。
「お疲れ様でした。」の挨拶と同時に、部員達は他の部の生徒に混ざって、体育館の外へと流れていく。
「2人とも、今日も乗せていってやるよ。」
滝沢先生が、いつものように私と奈央に声をかけてくれた。
「あの、今日はいいです。」
「何で?結構降ってるぞ。」
「あ、えっと…」
正直に理由を話したら滝沢先生はきっと、「そんな事気にしないで、乗っていけばいい」と言うだろう。
だけど、それではまた教頭先生に何を言われるか分からない。
…困ったな、何て言ったら…。
どう言えば上手く断れるのか考えていると、奈央が助け舟を出してくれる。
「私と美和子、ちょっと寄りたい所があるんです。ね?」
「う、うん。」
「こんな雨の日に?」
「はい。」
「ふーん…」
滝沢先生は、疑わしそうな表情を浮かべたが、一応納得してくれたようだった。
「分かった。それじゃあ、気をつけて帰れよ。」
滝沢先生は手のひらで、私の頭に、ぽんと触れると私達から離れて行った。
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