雨の日の秘密

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************ 数日後。 私は教室の窓から、雨を降らせる灰色の雲を見上げた。 ……雨、やんでくれないかな……。 今週に入ってから、ずっと雨が続いている。 そのため、私はあれからもう3回も、車で送ってくれるという滝沢先生の誘いを、何かと理由をつけて断っていた。 もう、断るための言い訳が思いつかない。 …どうしよう…今日は何て言って断ろう…。 私は思わず、「はぁ~」とため息を漏らす。 ……この前まで、雨の日が楽しみだったのに……。 「お疲れ様でした。」 いつものように、練習が終わるとみんな、喋りながら出入り口へ向かって歩いていく。 私と奈央も、その人混みにまみれながら、出入り口へと進んでいた。 と、滝沢先生が、私と奈央の方に近寄ってくる。 「佐伯、ちょっといい。」 「…はい…」 「美和子、私先に着替えてるね。」 奈央が私を置いて行こうとすると、滝沢先生は、 「あー、神崎も待ってて。すぐ、終わるから。」 そう言って、奈央を呼び止めた。 滝沢先生は、ちら、と周りの視線を確認すると、そっと顔を私に近づけて耳元で小さく囁いた。 「この前話したやつ…今日、行ってくるから…」 *
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