雨の日の秘密

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……それって…この前話してた食事会の事だよね……。 私の心の中は、一気に曇っていく。 そんな私の心の中を見透かしたのか、滝沢先生は「心配するな」と言わんばかりに、私の頭をクシャクシャと撫でた。 「気をつけて帰れよ。」 クルリと背中を向けて離れていく滝沢先生を、無意識に目で追っていると、香山先生が滝沢先生に近づいて何か話しかけた。 「――」 聞き取れなかったらしく、滝沢先生はほんの少し体を香山先生の方に傾ける。 「……」 ピンク色に頬を染めた香山先生の横顔をこれ以上見たくなくて、私は足早に体育館を後にした。 ************ お風呂からあがって、冷蔵庫から麦茶の入ったボトルを取り出す。 ガラスのコップに注いでコク、と一口飲んでから、リビングの時計をちらりと見ると、21時を少し過ぎたところだった。 ――先生、もう帰って来たかな。 この不安な気持ちを早く取り除いてもらいたい私は、残りの麦茶をゴクゴクと飲み干すと、 先生から着信がある事を期待しながら、階段を駆け上がるようにして2階にある自分の部屋へ向かった。 パタンとドアを閉めるとすぐに、充電器に差してある携帯電話に手を伸ばす。 「……」 メールも電話も着信していない事にがっかりしながら、自分で自分に言い聞かせてみる。 …教頭先生や香山先生達を、送っていってるのかも…。 …帰ってきたら、連絡くれるかな。 「大丈夫だよ。心配するような事は何も無かった。」の言葉が聞きたい。 …先生、早く私を安心させて…。 *
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