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(おまけ)
「………で、結局先輩は何を気にしてたんすか?」
「んー…あんま気にしないでほしいし、べつにアタシはあんたにどうしても構ってほしいって言ってるわけじゃない。まず先に言っとくね。」
「了解です。」
「あのね、おまえがいないと少し寂しいの。」
「…………はい。」
「早く帰ってきてほしいし、こうやって手を繋いで歌いたい。でもさ、それを口に出しちゃうと『アタシを優先して』ってねだってるみたい。」
「いいんじゃないすか。」
「ダメだよ。アタシはおまえがいなくても寂しいだけで済むけれど、今日みたいにおまえの助けを必要としてる人がいる。そのなかでアタシを優先しろというのは、いささか自己中心的だ。」
「………。」
「アタシがワガママを言えば、おまえが板挟みになるだろ。アタシのことはいいから、安心して人助けに行くといい。アタシだって目の前に困ってる人がいたら放っておけないんだ。アタシよりも優しいおまえならなおさらだろ?」
(………口が裂けても『成績あげてもらうための印象稼ぎです』なんて言えねぇ…………。)
「それだけ。ごめんよ、言うつもりはなかったんだが、結果的に言っちゃったね。」
「いや……全然構わないっつーか…あんたは、その…………気を遣いすぎです。」
「そーかー?アタシはワガママだよー?おまえに充分すぎるほど甘えさせてもらってる。不甲斐ない先輩でごめんねぇ。」
(どこがだよ。こないだのデートだって、買い物行っても俺に合わせっぱなし、映画も俺の好みのもんだし。挙げ句の果てには、俺が今月ヤバイの知って『飯奢る』とまで言い出すし。あれ欲しいこれ欲しい言わないし。あんたがワガママなら俺は強欲の塊だっての。)
「ほんと、アタシってワガママで甘ったれなんだからなぁ…いいかげんなおさなきゃね、この性格。」
「いえ。……もっと、甘えてくれても全然構わないっつーか。…むしろ、遠慮しすぎ。」
「そんなことないさ~?」
「ある。あります。
せめて『傍にいてほしい』くらい言ってもらわないと俺の立場がないです。」
「?」
「恋人、じゃないですか。」
「………………。」
「先輩?」
「………。……じゃあ……」
「はい。」
「………あ、明日からは、早く帰ってきてね?」
「最速で迎えにいきます。」
二人は繋ぐ手に力を込めた。
(おわれ!)
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