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緑一色の草原が広がる国。
広大な地には動物が走り、その国の豊かさを表しているようだった。
豊国(とよぐに)。
そこは正に、天国のような場所だ、と旅人は言っていたらしい。
今は、無き国であるが。
「今宵は宴だ。皆、存分に楽しんでくれ。」
合図と共に、それぞれ手に持った杯を掲げる。
満月が浮かぶ夜空の下で、新しい国王を祝福する宴が開かれていた。
「いや、しかしまだ若いのに王の座につかれるとは。
流石ですな、やはり樂千家は才に優れておられる。」
ほろ酔い状態の貴公子が、王座にかけた新の王を見ながら酒をあおぐ。
飄々とした表情で座っている男は、確かに就いたばかりの王とは思えない顔立ちだ。
年は若い。
それでまだ18だというのだから。
「代々樂千家は、奇抜な才能を持たれていますからね。
きっと教育が良いのでしょう。」
貴婦人が大きな扇子をパタパタと動かしながら、艶のある紅色のついた唇の両端を吊り上げた。
「いや、あれはまだ若すぎる。
あんなのに任せて、国王は一体何を考えておられるのだろうか。」
「そうだ。樂千家の小僧よりも、他に国王に向いている男がおるだろう。」
18というだけに、彼の支持率は当初、最悪だったと言っても過言ではないだろう。
しかし、彼の国王としての働きっぷりは、一年後には認められる事となる。
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